学校における著作物の複製等の考え方

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教員だから特別ではない

著作物を著作者に無断で複製し利用(以下「利用」・「使用」は、複製し利用する意味を指す。)する行為は、著作者が時間やお金をかけて創作した著作物を、対価を支払わず使用者だけは仕事として対価を得て利用しようとしていると言われてもおかしくはないでしょう。

利益のために使用するのではないといっても、教員が利用する場合は、給料を得て仕事で利用するのですから、無償で利用しているとは言えないですよね。

著作物を複製できる権利は著作者だけ

著作権法(複製権)
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

著作権法第二十一条(複製権)

著作物を複製するには、著作者の許諾を得る必要がある。このことが原則です。教員は特別で著作物を自由に使用できるという誤解から複雑になっているのではないでしょうか。

したがって、教職員会議等の校務はもちろん、授業等の教育活動においても、著作物を複製するには、著作者の許諾を得る必要があることが原則です。

著作者への許諾

著作者の許諾は、著作物の利用規約等も含まれると考えます。利用規約に、利用許可の記載があれば、著作者からの許諾が得られていることになるでしょう。また、著作者への許諾は、対価を支払って許諾を得ることも含まれます。

なお、利用規約に明記されていることや、著作権法に準じて利用できることがわかる場合に、確認をすることだけを目的として著作者に回答を求める行為は、著作者に余計な時間を割かせてしまう行為であることを念頭に置いておきましょう。

教育における著作物利用の円滑化を図るために

著作権法(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

著作権法第三十五条(学校その他の教育機関における複製等)

例えば、小説の利用といった本来は複製を想定していない著作物を授業において利用する必然性があるなど、教育における著作物利用の円滑化を図るために、著作権法第三十五条に適用される場合、無許諾・無償、無許諾・有償で複製等ができることとなっています。

つまり、無許諾で著作物を複製し利用するには、授業において次の項目に当てはまることが最低限必要となるでしょう。児童生徒の利用においては担当する教員に説明責任があると考えます。なお、公衆送信を行う場合は、無許諾・有償(第二項)となります。

  • 学校その他の教育機関における教育を担任する者及び授業を受ける者である
  • 授業の過程における利用である
  • 授業のために必要と説明ができるものである
  • 授業のために必要な部数である
  • 著作権者の利益を不当に害するものではないものである

引用による著作物の利用

著作権法(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

著作権法第三十二条(引用)

教育上の利用においては、引用も挙げられるでしょう。なお、引用は、教員、授業場面等の、使用者、使用場面は限定されていません。また、第二項に記載のように国の報告書その他これらに類する著作物は転載することができるとされています。学習指導要領の原文が転載され説明材料とされているのは、この条文が適用されているものと考えます。

まとめ

授業において著作権の制限がされていることは、児童生徒の学習効果を高めるために、著作物の利用の円滑化がなされているものと考えます。著作物の利用に関し、委縮することなく、適切に利用して欲しいと思います。関連して、試験問題や障害者等のための複製に関しても、著作権の制限がされています(著作権第三十六条、第三十七条)。

著作権第三十五条適用にあたっては、本来ならば許諾が必要なことを、無許諾・無償で利用しようとすることですから、複製等に関しては限定された場面となります。このことが難しければ、著作者に許諾を取り利用すればよいだけです。

必要に応じて、教育予算を使用し、著作物に対価を支払い使用することや、時間やお金をかけて著作物を創出した著作者に敬意を払い、使用することが大切なのではないでしょうか。

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